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zoom RSS 『風のラヴソング』完全版  越水利江子(作) 中村悦子(絵) 講談社・青い鳥文庫

<<   作成日時 : 2008/06/15 13:23   >>

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風のラヴソング 完全版 (講談社青い鳥文庫 271-1)

ぼくが、児童文学を書く上でバイブルとなった作品越水利江子さんの『風のラヴソング』文庫版です。
しかも、今回は新しい章も追加されて完全版となりました。
同じ作品をなんども読むことのないぼくが、唯一何回も読んだ作品です。
それほどまでに、ぼくの心に響くのはなぜなのでしょう。

表紙の中村悦子さんの絵も目から心にしみてきます。
なんども読んでいるからなのか、あのシーンだ! と見えてきます。
そして、第一章「ふわりふわり」が始まるのです。
もう、何回読んだでしょう。なのに、なのに涙があふれてきます。
母親が死んで父と兄と小夜子の三人の家族。そこへ京都の亡くなった母の姉夫婦が訪れます。
そんな時兄のたけしは不思議なものをみるのです。
たけしの前に現れる不思議は最後になって理由がわかります。
たけしの父親にたいする叫びに近い言葉に、ぼく同じ気持ちになってしまうのです。
幼い子どもは、自分で選べません。身の回りの出来事に翻弄されながら生きていくしかないのです。
せめて出来ることは、「どうしてなんだ!」と叫ぶことだけなのです。

ぼくも母子家庭で育ち、あわや、妹とも離れ離れになるという危機もありました。
家族の絆、兄妹の絆を引き裂かれることを思うと、言葉にできないほどの感情があふれてくるのです。
小夜子はぼくの中で妹として心に生きているように思うのです。
たけしの怒りも悲しみも、そしてどうにもならない父親の気持ちも今だからこそ、響いてくるのです。
小夜子の幸せを心から願うぼくがいます。

そんな気持ちを抱きつつ読み進めます。
小夜子が成長していく過程でさまざまな悲しみや苦しみにぶつかり、そんな中で出会っていく人々。
養父と養母、みきちゃん、日下部君、太陽。
どの登場人物もじつに見事に描かれています。それは、きっと作者の愛があるからでしょう。
差別、いじめ、障害、家庭内暴力、老化……。
今の社会の問題点を確実に捉え、そしてそんな中でもまっすぐに生きる人々の愛のありようが、切なく苦しく美しく描かれていきます。

一人の少女の成長という時間を、格好もつけずにありのままに、繊細に描いた作品です。
子どもはもちろん、かつて少女や少年だったぼくらにも、すっと沁みるのです。
作者、越水さんは「みきちゃん」のために描いたとおっしゃる作品。
その愛は「みきちゃん」だけにとどまらず、読んだ人々の心にきっと届きます。

苦しくても貧しくても、まっすぐに精一杯生きる姿が、風のラブソングとなって、ぼくらの心に流れるのです。

友達ってなんだろう?   長く一緒にいるひと。 
家族ってなんだろ?    わたしを生んでくれたひと。
生きるってなんだろう?   ご飯をたべて大きくなること。

そうかも、しれません。
でも、それだけでは無いのです。だれも教えてくれない大切なものがこの本の中にはあります。
読んで見つけてください。大切なものを。
きいてください。風のラヴソングを。






風のラヴソング(完全版) (講談社青い鳥文庫)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
本当に味わい深い作品です。風馬さんの感銘が理解できました。
yesnid(虹乃)
2008/06/15 13:53
イエスニドさま
この作品に対する想いを感じ取ってくださってありがとうございます。読む人で感じ方はさまざまですが、ぼくにはこんな風に感じました。
読んで読んで、書いて読んで。がんばりましょうね。
風馬
2008/06/15 18:36

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